会社の評価について

会社を評価するにはさまざまな角度からの検討が必要であるが、営利目的の会社が存続していくためにはつねに利益を生み出さなくてはならない。次に紹介する指標は財務データを基にした経営評価であり、会社の資源の有効利用の評価を含め、どのように、どのくらいの利益を生み出したのかを分析するものである。データは過去の数字である事からこれらの手法あくまでも結果であり、いわば静的な評価である。ここでは短・中期的な株式投資、主に上場会社投資の判断を目的に考えており、その他にも多くの分析手法があり、評価の目的によって適切な手法を選択すべきである。

上場会社の場合、Annual ReportにはManagement's Discussion and Analysis of Financial Statements が記載されている。これは会社の自己診断表であり、過去ばかりではなく将来の計画も含め、また財務データ以外の事も記載されている。多くのページにまたがり全部を読むのはたいへんであるが、その中で特に将来の見通しのセクション、見出しとしてはOutlook、またリスクを議論しているセクション、見出しとしてはMarket Risks、Forward Looking Information またはFactors That May Affect Future Resultsなど、には目を通しておくべきである。これは上記の静的評価を補う動的な評価の1つと考えられる。

    PE Ratio (P/E)
    Price Earnings Ratioの略で、株価(Price)を1株当りの利益(Earnings)でわって算出する。例えば、市場で取引されているある株を一株30ドルで購入したとする。一年間経ってこの会社の儲けが3ドルであったとすると配当が有る無しに関わらず会社の価値が3ドル上がっており、P/Eは30ドルわる3ドルで10となる。またその逆数を計算してパーセンテージで表すと、1わる10、または3ドルわる30ドルで10%となる。これは30ドルの投資の結果、その10%にあたる3ドルを得た事と同じである。つまりP/Eの逆数は投資利回を示すものである。ここで注意したい事は理論的には一年後の株価は33ドルのはずであるが、他の要因があるため必ずしもそうとはならない。ある場合はその他の要因と相乗効果で33ドルよりもはるかに高いかもしれないしまたその逆の場合もあり得る。

    P/Eの適正値であるが、比較基準となる値は利回りを考えれば簡単に計算できる。例えば短期の国債の利子を3.5%とすると、その逆数である29よりP/Eが低い株式については国債よりも投資価値があると判断できる。一概にP/Eの適正値がいくつとは言えないが、日本が経験したバブル時のような100を超える会社の株式はかなり高価な、また危険な投資といえる。例えば全ての癌の治療薬を発見した、または光の速さで飛ぶ飛行機を開発した、など来期からの利益が千倍になる、などの材料がある場合はその限りではない。翌年にはP/Eが大幅に下がる事が見えているからである。P/Eが20以下の会社であればまず高い買物ではないと考えられる。

    尚、ここではあくまでもP/Eだけを使って判断した場合の事で、上記で挙げた例とは逆に、半年後につぶれる事が分かっている会社であれば、たとえP/Eが1でも投資価値はない結論となる。


    PB Ratio (P/B)
    Price Book-value Ratioの略で、株価(Price)を1株当りの純資産(Book Value)でわって算出する。純資産とは貸借対照表で総資産から負債をひいたものであり、その時点での解散価値を表す数字である。投資金額(株価)と純資産額が同額であればP/Bは1となる。一株の純資産額が10ドルの時、市場で10ドルの株価をつけている会社は、P/Bが1であり、実質の価値と市場の価値(評価)が同じ事を表している。上記の会社の株価がもし50ドルであれば、P/Bは5となり、一株を取得するためにその純資産の5倍の投資をする勘定になる。

    P/Bの値であるが、これについても一概に適正値がいくつとは言えないが、そもそもこの数字は会社の人気を表す代表的な数字で、大きければ大きい程人気が高い、または将来が期待されているという解釈になり、個人的には10倍を超える会社にたいする投資はお勧めしない。

    DuPont System
    DuPont システムは、ROE (Return on Equity)、株主資本利益率を出発点として次の3要素Net Income、Asset Turnover、 Equity Multiplierに分解して会社経営を評価する手法で、その意味は順に、収益性、資本効率性、安全性である。その名前から想像できるように米国の化学会社DuPontが使いはじめた手法である。次に示すが、式の分解は非常に単純明快である。出発点は、

    ROE = 当期純利益 (NI)
    株主資本(Equity)

    分子・分母を分けて売上高(Sales)を組み込む。

    ROE = 当期純利益 (NI)
    売上高(Sales)
    * 売上高(Sales)
    株主資本(Equity)

    2項目を上記同様、分子・分母に分けて総資産(Assets)を組み込む。

    ROE = 当期純利益 (NI)
    売上高(Sales)
    * 売上高(Sales)
    総資産(Assets)
    * 総資産(Assets)
    株主資本(Equity)

    ROE = Net Income
    Sales
    *
    Sales
    Assets
    *
    Assets
    Equity
        (1)   (2)   (3)

     

    (1)は当期利益率であり、収益性を表し、(2)は資産回転率、Asset Turnoverと呼ばれ、資産が年間何回転したのかを表し、(3)は財務レバレッジ、Equity Multiplierと呼ばれ、総資産が株主資本の何倍かを表す。これは株主資本比率の逆数でもある。

    式からも分かるように、利益率、資産回転率、Equity Multiplier、何れもが高ければROEは高くなる。最初の利益率はコスト・コントロール、売上に対しいかに費用が制御されているか、2つ目の資産回転率は、会社が営業活動に用いた総資産を、売上にたいしてどの位の効率で利用しているか、を示している。3つ目のEquity Multiplierにはどんな意味があるのだろうか。この数字は、資産が大きければ、または資本が小さければ大きくなる。資産と資本の差は負債であるため、負債が大きければEquity Multiplierは大きくなるのである。負債といえば借金であるが、借金が大きくなればROEが大きくなるというのは分かりにくい話である。上記式からEquity Multiplierが大きいと ROEを高めるのは明白である。注意したい点は(1)の当期利益はマイナスになる、つまりNet Lossとなる可能性があるため、その際にEquity Multiplierが大きいとROEのマイナスが大きくなる点である。言わば相乗効果がプラスにもマイナスにも働き、マイナスになった場合は、経営に大きな悪影響を及ぼす。またEquity Multiplierが大きいとは、借入れ利子が大きい事を意味し、Incomeを圧迫し、式中の(1)の分子をloss方向に押下げる事にもなる。Equity Multiplierが示す意味は、ある程度の財務レバレッジ効果を得るためには借金は必要、しかしリスクも抱える事である。
    それではEquity Multiplierの適正なレベルはどれ位なのか。会社によっても異なるため、一概にいくつとはいえないが、会社が管理できるであろうリスクの範囲内である事が重要である。業種にもよりますが、金融関係を除けば、個人的には10を1つのチェックポイントと考えます。別の言い方をすると、自己資本が10%に満たない会社は、強固な財務体質とは思えないという訳です。いつの時代でも、どんな会社でも、過剰債務による経営は好ましいで方法ではない。


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